美しき聖地


 

 

 

 

  

 
Glendalough
4日目の13日は、6世紀から12世紀の間に立てられたキリスト教の寺院跡が残っているグレンダロッホへ出かけた。グレンダロッホはダブリン市内から東南の方向へ、バスで2時間のところにあった。朝9時に宿を出てバスでダブリン市内へ、店を見て歩いた後、10時30分のバスに乗ってグレンダロッホに向かう。途中の山並みはほとんど牧草地で、羊を飼っているところが多い。ダブリンもイギリスもそうだが郊外は信号が少ない。ロータリー式の交差点が実に合理的に作られている。最初に出会った時は危ないのじゃないかと思ったが、慣れてくると待ち時間が少なくてとても便利に感じた。そんな道を走りながら通り過ぎていく民家の佇まいの長閑さに、日本じゃこうはいかないなあと羨ましく感じた。
目的地に着くと同乗の人達が休憩所の中に入っていくので、それについていったら何かお金を払わなくてはいけないようだったので、入場料だろと思って支払った。中のほうへ入っていくと資料展示室があり、この代金かと思っていると係りの人が案内してくれて映画室に通された。バスで降りた人はたくさんだったのに、中に入ったのは私たちとあと3人だけだった。遺跡の映画を15分ばかり見ることになった。
帰りのバスは4時10分だったので、時間は充分あったのだが映画を見ていた間、みんなに遅れたような気がして足早に遺跡のある場所へ。すぐ目の前にも素晴らしい塔が並んでいるのだが、それは後回しにして遠いところから見ることにした。
Green Road(緑の道)というのがあってそれを歩いて行くと、いつのまにかその静けさの中で自分一人だけというような、澄んだ感じになってきた。国立公園ではあるが、手を加えないでできるだけ自然のままにしている。大きな木が倒れていてその上に緑の苔が覆っていた。そのうち広々と視界が開けてきた。右手には低い円形の土塁が中央に位置するような広場があり、左手には急な斜面の山道があり、真っ直ぐの道の方は屋根の壊れた石造りの建物の跡が見えていた。まず真っ直ぐの道をとった。上から3段目の左の写真が壊れた建物である。地図にはこの上のほうにも湖のほとりに立つ建造物があるようだったので、上へ上へと歩いていった。ところがそれらしきものには出会わずに、登山道に合流してしまった。そこにある道路標識には登山道としかなく、これ以上登っても無駄だという事で下って来た。それから土塁のある広場へ行ってみる。円形の土塁の真中に立つと左右の山に挟まれて大きな湖が遠くへ広がっていた。この景色も又、現実のものとは思われないような異様なコントラスト持って存在していた。
時間も1時を過ぎ何か食べたいところだったので、レストランを探していると駐車場に立ち食いのバーガーショップがあった。私はハンバーガーとスープを川口さんはチップアンドフィッシュとスープを頼んだ。皮肉なことにレストランで食べるよりずっと美味しい昼食だった。
それからお目当ての細い高い塔を目指して、来た道を戻った。塔の近くに来て見るとたくさんのケルトの十字架が立っていた。屋根が落ちてしまった12世紀の建物の中には、壁に沿って墓誌銘が立っていた。文字は特別に変わったものではなかったが、見え方が面白かった。
このグレンダロッホはニューグランジよりずっと神秘的な魅力に溢れていた。石の建物の面白さもさることながら、なんとも言えない神聖な気に触れたことが、大きな喜びだった。
帰りは来た道をまたバスで帰っていった。

グラハム家の夕食
ダブリン最後の夜だからということで、グラハムさんは私たちを彼の家での夕食に誘ってくれた。彼の家はレンガを張った古い型の集合住宅ではないが、形は同じで壁が白いモルタルだった。この家に越してきて半年だそうで、壁紙は剥がした状態でまだ壁には何も飾ってなかった。まず居間に通されて飲み物をいただく。私はビール、奥さんのイボンヌが白ワインを飲みながら相手をしてくれる。料理人はなんとグラハムさん。7歳のレイチェルちゃんははしゃいでとても元気がいい。日本のポケモンやピカチュ―がアイルランドでも大流行で、バックやカードなどアニメのキャラクター商品を大切に集めていた。日本の文字にとても興味があるようで、私達の名前を漢字やカナで書いてあげると、それを見て一生懸命に写していた。
明かりの使い方が日本とは随分違う。ローソクを使っての影のある照明が魅惑的である。壁に立てかけた10号ぐらいの彼の新作の前に黒い板を置いて、その上に5、6本の直径5cmくらいの大きなろうそくを立てていた。その光が作品のガラスに反射して、とても美しい。日本の床のような感じがした。食卓にも同じようにローソクの灯りが揺れていた。その光の中で、最初に出て来たのが生牡蠣、レモンをかけていただく。それから大きな白身魚のソテーをユニオンジャックのエプロンをつけてた彼が取り分けてくれた。野菜サラダと人参やポテトや色んな野菜を煮てつぶして混ぜたもの、それと2種類のパン、ビールやワインなどが出てきて、とても美味しく楽しく戴いた。
私にはとてもこんなもてなしは出来そうにない。彼が日本に来た時には、さてどうしようか。

そうだ、彼からメールが来て3月に会いましょうとあった。これで3月28日アクロス福岡でまた会う事ができる。

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