日本古来の文化は、日本の中心で華やかに輝いていると思っている人が多いと思いますが、それは幻想だと思います。あるのは美術館や博物館に収められた文化遺産だけで、魅力的な文化はすでに枯渇してしまいました。そこに住む一人一人の心の中に、そのものが持つ本来の美を感じとる感受性が失われてしまったからです。この感性を目覚めさせることは容易なことではありません。
豊かな人生には学びが大切です。書の学びは、美を感受するためにカリキュラムされるべきですが、子供に感性など必要ないとばかりに、個性の存在を認めない書写教育が、書の全ての魅力や可能性を消し去ってしまいました。しかもあろうことか書文化の拠点である「日展」が「読める字を書こう」などといいだし、書写教育礼讃の審査基準を生み出してしまいました。とても悲しいことですが、これが今の日本の貧しさの原因の一つではないでしょうか。
ところが、救世主が現れました。漢以来2000年という長い間、違う解釈で読み解かれていた原初文字の甲骨文・金文を、文字や民族文化の深い研究の末「白川静」が読み解きました。白川静はすごいと聞いて字典の「字通」取り寄せましたが、恥かしながら内容をよく理解せず10年の間書棚に積んでいました。平凡社の別冊太陽「白川静の世界」を読み、日本との係わりを目の当たりにすることで「白川静」の仕事がスーッと見えてきました。絵で構成された漢字の面白さや、語源を知ることが感性に深い影響を及ぼし、漢字を沢山知ることが学ぶ喜びにつながるのではないかと思うようになりました。「白川静」の漢字文学を根っこにして書の学びを進めていこうと思っています。
これからの学びのシンボルマークに金文の才を篆刻してみました。ここでは新たな学習方法や思うことを具体的に紹介して行こうと思っています。