森 麻衣


HYOUGEN=ART SURUCOTONI SINKETSUWO SOSOGU ・ MAIKAKU

         ココロ
この二つの作品に出会って舞い上がってしまった。仮名を見直そうとしている私にとって、あまりにもタイムリーだったのである。書展を見に行かなくなって久しいが、一番の原因は創造性豊かな作品に出会わ無いからである。そのことは一人一人がどう書とかかわるかということによるので、他人がとやかく言えることではない。ただ、何を書くかというモチーフにもっと意を注げば自己表現の可能性が、面白い方向で見えてくるのでないかと考えている最中である。
「表現=ART することに心血を注ぐ・麻衣書く」はまさに森さんが直面していることであろう。そのことに真摯に向かう姿が表現として形になっていると感じる。「ココロ」は縦に読むとココロココロココロココロとなり横へ読むとココロコロコロココココロとなり韻きの面白さと連続する形の面白さを片仮名という記号を用いることで強調している。そして、心象(心)をココロと無機質に表しているのに、スケールの大きな表現の世界を感じる。
彼女は福岡教育大学特設書道科の4年生である。書の伝承性に距離を置き、自己表現としての書の感覚をすでに見につけているのが驚きだった。芸術という言葉を本から学ばなくても、生活感覚として実感出来ているからであろうか。自由という難しい実態を間違って捉えている若者が多いことも感じるが、本来の自由を感受している若者も多いのではないかと、森さんの存在を通して感じている。
聞けば教育大では教員養成だけではなく、ア−ティストを育てる生涯学修科が3年前から出来ているそうだ。卒論は個展を開催することだそうだ。書がいい形で社会に残っていくには社会をリードする優秀な人材が必要である。公募展から生まれた作家ではその役は務まらない。個人の意思を明確に表すことの出来る、システムを作り出すことが急務であろう。「拾い物展」に森さんがこの2点を出品してくれた。そして森さんの案内で沢山教育大の学生さんが来てくれた。ゆっくりと書の話が出来、生き生きと輝く目に出合えた。これからが楽しみである。私自身作家として生きていくことを実現できていないが、これらの若い人たちが書の仕事で生きていけるような環境を作りたいと思っている。

森さん大きくはばたいて欲しい。

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